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世界初の繊維スリングを生んだSpanSet社の歴史〜ルッドスパンセットジャパンの「スパンセット」とは?〜2025.12.05

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皆さんは、
世界で初めて吊り具用の繊維スリングを開発したのはSpanSet社であることはご存じでしたか?
20世紀半ば、世界の産業現場(橋梁、船舶、建築物)はすべてが鋼鉄の力に支えられ、
重量物の吊り上げや移動(荷役)作業においても、ワイヤロープが絶対的な主役でした。
そんな中、
「なぜ繊維で吊り具を作ろうと思ったのか?」
「どのようにして世界の現場で信頼され、選ばれる製品になったのか?」
その理由を知れば、”Spansetが世界的な繊維スリングのトップメーカー”となった意味を感じていただけるかと思います。

〜繊維スリングの原点〜 ”自動車のシートベルト”の開発が始まり

70年ほど前、今では想像すらしにくいかもしれませんが車にはシートベルトがありませんでした。
事故防止への配慮がほとんどなく、現在であれば無傷で済むような事故でも命にかかわる結果となり、深刻な社会問題となっていました。

1950年代後半、スウェーデンの自動車メーカーのボルボは、車に乗る人の安全性を向上させるための革新的な技術を模索している中で
リボン織物会社の経営者であるエリック・エニンブ氏に、ボルボ車用のシートベルトの開発を依頼することにしました。

この依頼を受け、エニンブ氏はボルボの技術者と共同で、高強度合成繊維リボンを用いた自動車用3点式シートベルトの開発に成功しました。

世界で初めて近代的な自動車用の3点式シートベルトが標準装備されたのは1959年のボルボの「Amazon」と「544」モデルでした。


当初は「本当に必要なのか?」と懐疑的な声もありましたが、
三点式シートベルトは事故による死亡や重傷を大幅に減らす効果がすぐに証明されていき、
「スウェーデンの発明は先駆的かつ耐久性に優れる」というイメージを世界に定着させることとなりました。

ボルボは「安全はビジネスよりも優先」と考え、自社だけでなく世界全体の安全向上のために
シートベルトの開発技術を公開し、瞬く間に世界へと広がりました。

これにより、1960年代後半〜1970年代には、欧米各国でシートベルトの装着が法律で義務化され、
現在ではほぼ全ての乗用車で三点式シートベルトが標準装備となっています。
この体験を通して、エニンブ氏は
「合成繊維ウェビング」が「人の命を守る」という極限の条件を満たす圧倒的な強度と信頼性を備えているという確信を掴むことができました。
”自動車衝突という苛烈な試練にも耐えうるこの素材は、別の分野でも活かせるのではないか”という気づきが、
後に荷役の世界を一変させる新たな出発点となりました。

~SpanSetの創業~ ビジョンの誕生

エリック・エニンブ氏は、シートベルトの成功によって、
合成繊維ベルトへの絶大な需要を背景に、新たな事業の可能性を感じ
1966年スウェーデンのマルメにSpanSet社を設立しました。

これまでワイヤロープとチェーンが支配してきた産業用の吊り具や荷締め具の分野に、この高強度の合成繊維の技術を応用できるのではないかというアイデアに挑戦しようとしたのです。

度重なる改良と開発を重ねて、SpanSetが世界で初めて市場に投入した
繊維製の吊りベルト(リフティングベルト)と荷締めベルト(ラッシングベルト)は、まさに革命的な繊維スリング製品でした。

市場への参入当時、柔らかい繊維スリングで重量物を吊るという発想は「非常識」とされ、多くの現場で受け入れられず、鋼鉄の重さと硬さこそが強さの象徴と信じられていました。

この業界特有の先入観という大きな壁に直面しながらも、最初の成功例の一つが製紙工場での紙輸送で、
紙は傷つきやすく、従来のワイヤロープでは紙が傷ついてしまい扱いにくかったのですが、
SpanSetの繊維スリングは荷を傷めず、高い強度を発揮しました。

一度繊維スリングの利便性と安全性を体感したユーザーからは熱烈な支持が寄せられ、
評判は瞬く間に世界へと広がっていきました。
創業の翌年にはドイツ、フランス、イタリア、イギリスに現地法人を設立し、
スイスのホンブレヒトコンにはグループ本社SpanSet AGを設立。
そこからヨーロッパ、アジア、オーストラリア、南北アメリカへと展開していきました。
初期の嘲笑をわずか1〜2年で称賛に変えたこの歩みこそ、SpanSetの繊維スリングが“代替品”ではなく、“時代を変える発明”だったことが物語られています。

SpanSetが築いた「安全」というブランド〜現場から生まれた世界基準

SpanSetは、より強く・軽く・扱いやすいスリングを開発することで、作業者の負担を軽減し、安全性を高めるだけでなく、
現場の安全を守るための基準づくりにも取り組んできました。

1960年代の創業以来、現場で直面する課題に応じて製品を改良するだけでなく、
耐荷重表示の標準化や操作手順の安全化など、ユーザーが安心して使える環境を体系的に整備してきました。


たとえば、従来のスリングでは、耐荷重を示す表示が摩耗したり汚れで見えなくなることが頻繁にありました。これは、作業者がスリングの能力を正確に判断できず、誤った使用に繋がる重大な安全のリスクがありました。

そこでSpanSetは、現代の円形および平型合成スリングにおいて世界的に適用されている「カラーコード規格」を発明しました。
これは、吊り具の最大使用荷重(WLL: Working Load Limit)を特定の色と結びつけるシステムです。
  • 紫 (Violet): 1トン
  • 緑 (Green): 2トン
  • 黄 (Yellow): 3トン
  • 灰 (Grey): 4トン
  • 赤 (Red): 5トン
  • 茶 (Brown): 6トン
  • 青 (Blue): 8トン

橙 (Orange): 10トン以上

このシステムにより、作業者は遠目からでも、あるいは泥でタグが汚れていても、使用すべきスリングの耐荷重を直感的に識別できるようになりました。この言語の壁を超えたユニバーサルデザインが、誤った吊り具の選択による過積載事故のリスクを劇的に低減することができました。
特許を取得後に、現在の繊維スリングの規制要件ともなり、世界全体の安全基準の向上に貢献しました。

また、荷役作業中に荷崩れによる事故も頻繁に起こっていたため、それを防ぐためにABSプッシュラチェットを開発しました。史上初めて、張力がかかった状態のラチェットを段階的に開放することが可能になり、積荷を安全に制御しながら緩めるという機能が実現されました。
さらに、テンションフォースインジケーター(TFI)を搭載したプルダウン式ラチェットも開発され、ラチェット本体に実際の張力を直接表示する機能が実現しました。これにより、作業中に、作業者による推測で調整することを排除し、安全性をさらに高めることができました。

これらの技術は単なる便利さではなく、現場での安全性を格段に高めるための工夫です。
その結果、SpanSetの製品は世界各国での安全規格に反映され、自らが定めた独自の基準が国際的な指針となるまでに至っています。

こうした取り組みは、SpanSetを単なる素材メーカーから、安全を体系化して提供する世界的なブランドへと成長させました。

〜SpanSetの革新〜高所作業の安全市場への参入

SpanSetは、シートベルト開発で培ったウェビング技術と動的荷重に関する深い専門知識を活かし、高所作業の安全市場へと参入しました。
生命に関わる用途での経験は、個人用墜落制止用器具(PFPE)の開発において完璧な背景となりました。

当時主流であった重くかさばるアメリカンスタイルのハーネスとは一線を画し、人間工学と快適性を重視しながらも安全性を一切妥協しない、軽量なヨーロピアンスタイルのデザインを導入したことで特徴づけられています。
さらに、SpanSetは現場特有の課題に対し、以下のような画期的なソリューションを次々と生み出していきました。

安全なアンカーシステムの確立

かつて高所作業の現場では、「安全にアンカーポイントを確保すること」が大きな課題でした。
墜落時の衝撃を最小限に抑えるには、本来アンカーは頭上に設置するのが理想です。しかし頭上のパイプは滑りやすく、固定しづらいという問題がありました。
従来の現場では、「即席アンカー」として、玉掛け用ワイヤーロープを単管に巻き付け、シャックルで締結する方法が一般的でした。しかし、ワイヤーロープは剛性が高く単管に柔軟にフィットしないため、「面」ではなく「点」や「線」でしか接触できずにいました。その結果、万が一衝撃荷重がかかった際に、単管が変形(座屈)してしまうリスクがあり、作業者にとっては二重の危険を抱えていたのです。
SpanSetは2001年に、【足場アンカーの危険性を解決した「WRAPPA」】 を開発しました。業界初の足場用アンカースリング「WRAPPA」は、工具なしで設置ができ、内側に強力なグリップ素材を採用しているため、滑り落ちない強力なアンカーポイントを確保できるようになりました。
これにより、従来は不安定だった足場パイプを、規格に適合した「信頼性の高いアンカーポイント」として活用することを可能にしました。

墜落後の迅速な救助体制

墜落後にハーネスで宙吊りになった作業員は、深刻な危険に晒されてしまいます。2001年、SpanSetは専門家でなくとも迅速に救助を行える、世界初の事前組み立て済み「Gotcha」レスキューキットを開発。
これにより、複雑な緊急事態が管理可能な手順へと変わりました。

「労働者全員」を守るハーネスの開発

既存の墜落制止用器具は、通常100kgの作業員を想定していました。2008年、SpanSetはそれ以上の体重の作業員向けに特別に設計・認証されたハーネスを含む「ATLAS 140レンジ」を開発。
これは、標準化された一部だけでなく、「労働者全員」を保護するという同社のコミットメントの表れでした。

安全を売るのではなく、“安全をつくる”〜その精神が、今も変わらずSpanSetの根幹に存在しています

SpanSetの歩みは、「現場の安全をどう守るか」という問いへの挑戦の連続でした。
 「安全とは製品の性能だけではなく、使い方や基準そのものからつくられるべきもの」―そうした理念のもと、SpanSetは国際的な安全基準づくりにも深く関わってきました。
50年以上にわたり、規格を策定し、それを繰り返していくことで、物事を当たり前へと変化させてきました。

自社の経験をもとに、業界全体の安全水準を引き上げるために貢献し、今日では“SpanSetの基準”が“世界の基準”として認められるまでになっています。
こうした姿勢こそが、SpanSetが世界中の現場で「信頼できるブランド」として選ばれ続ける理由です。

RUD SpanSet Japan(ルッドスパンセットジャパン)の使命

SpanSetは自動車用シートベルトの開発から創業以来、常に「安全をつくる」ことを使命として歩み続けてきました。
その理念は、半世紀を超えた今も世界中の現場で息づき、数えきれない人々の安全を支えています。

単なる吊り具メーカーではなく、吊り上げ、荷締め、高所作業における包括的な安全ソリューションを提供するグローバルリーダーへと成長してきました。

私たちRUD SpanSet Japan(ルッドスパンセットジャパン)も、その精神を受け継ぎ、日本の現場に寄り添いながら、SpanSetブランドが持つ技術と信頼をお届けして参ります。